県民企業常任委員会でベトナムへ視察

平成27年8月29日(土)

 24日から27日まで、県民企業常任委員会でベトナムのハノイ、ホーチミンにおいて水ビジネスや国際交流事業を中心に視察してまいりました。ベトナムにおける日本は最大のODA支援国。資金協力(1992〜2013 円借款累計2.2兆円)、技術協力(専門家派遣8200名)、ボランティア支援ともに高い実績を積み重ねてきた結果、日本への信頼が厚く、期待も大きいことがわかります。ベトナムの抱えるインフラ課題に、県企業庁が取り組もうとしている海外への水道技術協力「水ビジネス」へのニーズは高いことを確認。外国を知ることは日本の理解を深めること。私たちはお風呂に入るのも、トイレの水も、庭の水撒きも水道水を使っています。そんな「当たり前」を改めて考える視察になりました。神奈川の技術協力の展開に委員会としても協力していきたいと思います。

 8月24日 JICA(国際協力機構)ベトナム事務所で調査させていただきました。ベトナムにおける国際協力事業の概要、水道事業の現状と日本自治体の水ビジネス展開をヒアリング。2020年の工業国化を目指すベトナムで、JICAはインフラ整備、製造業、農業ほか多くの有償・無償の支援。空港の第2ターミナル、空港からの幹線道路も。

 ハノイやホーチミンの上水道整備率は都市部では80〜90%になっているものの、農村部では10〜20%と未整備地域も多く、更に漏水率が25%(県水道では5%)と高い。ハノイやフエで、東京都、横浜市がJICAの支援のもと、上水道整備、漏水対策など技術支援をしています。まだ他地域においても、今後水ビジネスの支援ニーズが高まりそうです。
 ベトナムの国土は、四国、九州、四国を除く日本と同様の面積、人口は9千万人ですが、国民の平均年齢が28歳。ベトナム戦争で多くの命が犠牲となったためです。

藤原さんはJICAから企業開発庁に派遣のシニアボランティア。企業の業務改善や経営指導を行っておられます。
 JICAのシニアボランティアが派遣されている、企業開発庁中小企業支援センターへ。
 シニアボランティアの藤原さんから、企業支援の実績を伺いました。日系企業はベトナムに1300社も進出している一方で、まだ現地調達が20%と低く、裾野産業、中小企業の育成が欠かせません。県が6月の補正予算で進めようとしている海外人材のリーダー育成についてのアドバイスを質問したところ、まさにベトナムではリーダーとなる中堅の養成が求められており、ベトナムの人材育成に協力してほしいと熱意あるご意見をいただきました。

ハノイ市水道公社                  北タンロン浄水場は日系企業が進出するタンロン工業団地に近接しています。
 8月25日 ハノイ市計画投資局、市水道公社に伺いました。公社がハノイ市民650万人のうち200万人に水道水を供給していますが、農村部ではまだ15%足らず。水源は地下水に頼っているため、地盤沈下も問題になっています。
2050年までに給水、排水、下水の100%整備を計画しています。神奈川の水道事業のノウハウを生かす可能性について、有意義な意見交換できました

 ハノイ市水道公社の北タンロン浄水場を見学しました。東京都が浄水処理技術などを協力しました。
隣接するタンロン工業団地には日系大手メーカーが、浄水場の建設をはじめ、インフラ整備も。
地下水を水源とする北タンロン浄水場では、高濃度の鉄やマンガンの除去が重要。日系企業が浄水場管理をサポートし、技術者を育成しています。
ホーチミン市工科大学
 8月26日 ホーチミン市水道公社、ホーチミン市工科大学を訪問しました。
 飛行機で2時間、ホーチミンへ移動。当市は大阪市や北九州市から、技術指導を得ながら市内87%に水道を供給しています。
100%供給を目指して、本県に水圧や水処理対策、河の水質管理など課題改善のために協力の依頼もありました。
本県が、平野から山間部まで広域的に水を供給できる強みや、環境技術で貢献できるのではないかと思います。

 写真はホーチミン市工科大学です。土木工学、環境学など11学部を持つトップクラスの工科大学。
横浜国大との大学交流協定、JFEスチールと建設用鋼材の技術提携、金沢大学、長岡大学との共同研究など、日本との国際交流に意欲的です。ホーチミン市も目覚ましい経済発展の中で、大気や水質、ごみ処理など課題は多いと感じました。神奈川への留学や研究交流も推進できるでしょう。


VINACONEX日本語学校は全寮制。スケジュールがびっしり書かれていました。

 8月27日最終日 日本に多くの人材を派遣しているVINACONEX日本語学校へ。研修生の皆さんも歓迎して下さり、授業を見せていただきました。親会社のVINACONEXは大手建設会社、80の子会社を持ち、ノイバイ空港新ターミナルを大成建設とのジョイントで建設。

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日本語を約4か月700時間程学び、土木技術などを習得したうえで、日本へ渡航します。

 これまでに1700人を海外へ派遣しており、3年前に開校した日本語学校では全寮制で70人が学んでいます。約4カ月間日本語を学び、同時に職業訓練を受けながら、文化やマナーを習得します。写真はブロック建設や溶接工の技術訓練の様子。溶接の高い技術でトヨタに20人が派遣されています。真剣に日本語や技術を勉強している姿が印象的でした。 

 今後は、介護人材の育成も計画中です。現在来日中の女性研修生は、衣服製作やお弁当調理に従事しているそうです。日本で技術や経験を積んで良かったと思っていただけるように、母国の発展に役立てるように、県としても応援していきたいです。